つろく (割烹・京都)

『京味』の技を受け継ぐ、若手料理人・上田健登さんが魅せる、京都の隠れ家。

以前より、「つろく」さんのお名前を、方々から何度も聞いていた。
そのほとんどが、「京都の方がこっそりいく店」だったり、「食通の間で今よく話題になっているのよ」という感じだった。

気にならないはずはない。

私の今回の日本帰国そのものが、急な予定だったので、ほんの数日前という電話にも関わらず、思いがけず空席があり、こんな風に、数日前にすっと予約が取れた事が、なによりも嬉しい。

かつての文豪の方々が、書物によく書かれていたような、京都の食事の在り方は、これなのだろうな、と感じた。

コースは設定されていないので、好きなものを好きなように頂けることが、心底嬉しい。

食べ手の自由があることは、わがままが許されていて、
それを受けと止めてくれる懐と気概が、お店にも、
そして、東京・新橋の名店「京味」での経験を持つご主人・上田健登さんにもある、という事だ。

細い路地を抜けたところに、お店はあった。

(しばらく探してウロウロしてしまいました)

こういった面持ちのアプローチは、やはり、気分が高揚する。

15席のカウンター。
端のお席は、小上がりになっていて、

「お子さんが一緒でも寛げるように..」という心遣い。

中央に設られたレンガの火元に置かれた、土鍋や銅製のポットが目を惹いて、凛としたカウンター以上の、心躍る感がある。

40種程度もあるお品書きから、まさに、その日のその瞬間の心持ちで、お料理を選んでみた。

その上で、お店から供される、例えば、蕗のとうのお豆腐、白魚の真薯といった、お皿。
そこに、上田さんの表現される、滋味深い味わいを何度も確認させていただいた。

そして、シグニチャーともいえる、ぐじ松笠焼の香ばしさ。
淡く、綺麗で丁寧な味の加減には、押し付けがましさは全くなく、お若い上田シェフでありながら、ある種の熟練された感覚さえも覚えてしまう。

蕗の薹豆腐白味噌餡。こういうお品こそ、京を最も感じさせてくれる。食感も、味わいも、深く優しい。
白魚の真薯のお椀。
この店のシグニチャーを標榜するぐじ(甘鯛)の松笠焼。
皮目のパリパリ音が弾ける香ばしさ、丁寧に保たれた身の水分量が、その1匹の魚が持つ個性を引き出す。
お造りは、人数分をお任せして、それぞれの枚数も聞いてくれるという、心遣いが嬉しい。この日は、鮪、平貝、鯛の三種。

その上で、この夜、私を完全に虜にした、二品。

筍も鎮座する、熊ロース肉と花山椒の小鍋。

グツグツ出汁もほとばしる、という様相で、土鍋の中で熱く煮える熊の小鍋料理。
カウンターに登場したのちも、しばらく、美味しさのエネルギーを発散し続ける。

この、熊肉の柔らかく、脂のサラリと溶けること…。
出汁の旨みの深さ。
花山椒も、迫力の筍も、熊の印象にすっかり圧倒されていました。

この素晴らしい鍋をいただいた暁には、お品書きにあった、もう一つの小鍋、すっぽん。
こちらも非常に気になってきました。。。

そして、感激の二品目は、

からすみ味噌漬天ぷら

唐墨を天ぷらに…。反則技ともいえる、旨さの桃源郷。

ああ…、これはもう、特別純米の田酒と相まって、同席の友人と共に、何度も唸るしかない美味しさ。
あと数皿でも、数時間でも、これをいただいていたい…そんな想いに駆られてしまいました。

ご提案いただく日本酒は、どれも、すこぶる美酒。
かなりたっぷりお注ぎいただいていると思います。

「つろく」では、誰をも受け入れてくれる、優しい空気がある。

会話も自ずと弾み、お料理も、お酒も、初めての訪問なのに、自分らしく、頂ける。

その様な店は、実は、数多くない。

余韻の長く残る、再訪を心に決める、そんなお店です。

つろく
075-275-3926
京都市中京区松屋町51
月ー土曜 5pm〜
日曜 休み

www.instagram.com/tsuroku_kyoto/

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