背トロ

Endo at The Rotunda  ロンドン | 2022年2月

鮨職人 遠藤和年

鮪漁師 田中一

ロンドンきっての鮨レストラン Endoの鮨職人、遠藤和年さんには、いつも驚かされる。

少しの間を置いて、お店を訪ねると、いつも、新たな驚きがあるからだ。

常に進化を続けること、それが、食べ手に伝わるレベルでの進化を遂げることは、本当に難しいし、孤独な戦いだと思う。

先日の食事で私が最も感激したのは、彼が握ってくれた、背トロだった。
背トロは、通常のトロが取れる腹の部分ではなく、背ビレの下にあたる部分の身で、程よい脂、赤身の部位でもある。

初め、何も告げずに、差し出された中トロ。
口に含むと、最初は、冬の濃厚な脂が口内を独占した後、「これは何!?」という風味がじんわり立ち昇ってきた。

最初、この味わいをしばらく言葉にできなかった。

複雑で、いくつもの層と深みがあり、強さもあり、その上で、ただ単にきれいなだけじゃない、”何か” があった。
美味しい、旨味たっぷり、そういう ”美味” では、ないのだ。
なにかもっと、実体のある現実、の味がした。

「これ、背トロといって、背の部分なんですよ。今日、是非食べていただきたくて、取っておきました」

遠藤さんが言う。

次の握りやお料理へと食事は進んで行くが、それでも、まだ、私の中で、この何か、の味が、何であるか、どうしても言葉にしたくて、考え込んでいた。
そして、ようやくして、これだ、という言葉に辿り着いた。

「生命 – いのち、の味」

そう、大自然を生きたもの、野生のものだけが持ちえる味。

そう気づいた瞬間、突如として、目の前に、大海を豪快に泳ぐ、この雄大な生命の姿が脳裏に浮かんだ気がした。

まるで、この巨大な生命が泳ぐ、海洋の深く、冷たい水の温度が感じられるかのようだった。

水の塊を、滑らかな肌身が、身体全体で重い水をシャープに切って行くような、そんな感覚ですら湧き上がる。

そうして育った生命が生んだ、稀有な風味が、今一度、遠藤さんのカウンターでその夜、蘇った。

この鮪を揚げたのは、田中一さん。ポルトガル在住の鮪漁の漁師さんだ。
全身全霊を、鮪に捧げ、鮪漁に取り組まれている。

Endoでの食事から数日経ったある日、彼に、背トロについて伺いたい、とメッセージ送り、その返信を見て、愕然とした。


そこには、こう、書かれてあった。

「背は、腹に比べ脂が少ないです。

その分、魚が持っている特徴が大きく表れます。

逆に言えば、脂は特徴が出にくい部位です。

魚の特徴とは、今までどの様に生きてきたかです。

言ってみれば、マグロの生き方が表れるのが背です。

マグロの住んでいる、海の香り。

マグロが食べている、食べ物の香り。

マグロの泳いだ距離、筋肉の締まり。

コレらが、脂が少ない部分に表れます。

脂が少ない分、人間がより繊細にそれを感じ取るのだと思います。

全神経を使って、それを味わうのだと思います」

この夜のような、味わいをくださった、遠藤さんと田中さん、Endoに関わる全ての皆さんに感謝したい。

***

Endo at The Rotundaの写真やビデオを、ぜひ、インスタグラムでもご覧ください。

遠藤シェフ、チームの皆さんの、熱い想いと挑戦の物語、投稿させていただいております。

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田中一さん

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  • 下の写真は、スペイン産養殖鮪。ヨーロッパではこちらも最上級とされている。それぞれの鮪の味わいを見極めて、遠藤さんは、それらを極上の握りに仕立てる。

SE TORO 背トロ – The Connoisseur’s Toro

Endo at The Rotunda, London | February 2022

Sushi Chef KAZUTOSHI ENDO

Tuna Fisherman HAJIME TANAKA

Chef Endo san never stop challenging and every time I dine here, there are new surprises and discoveries. This time, what stroke me the most was his SETORO – Chutoro just under the dorsal fin. And most importantly, this tuna was from Hajime Tanaka san – a Japanese tuna fisherman based in Portugal.

Normally, toro is mostly found in the belly. But Se-Toro, as the name suggests, is the Se(back) side and has a different flavour to belly toro.

“ I chose this part for you tonight”

said Endo san.

“ This is connoisseur’s toro, and we sushi chefs love it”

The differences in taste was distinct ( at least for me ). However, at first I had no words to describe it. I really didn’t know how to express this special flavour.

It was complexed. It has layers, characters, strength and appealing, still none of the words fully describe what I was tasting.
After a while, as I was exchanging opinions with Endo san, I finally found the right word.

Taste of things lived

A life lived on this beautiful planet.

I then suddenly visualised an image and almost felt it.
A great large fish swimming boldly in the big ocean. It was as if I could feel the temperature of the ocean, as if I were slicing through a mass of water with my whole shiny smooth body. A precious life that could only grow in the wild was now reborn at Endo san’s sushi counter that night.

A few days later, I asked Tanaka san about Setoro and and received a reply that utterly surprised me.

“The back of the fish has less fat than the belly, so the characteristics of the fish are more pronounced.

On the other hand, the fat is the part of the fish where the characteristics are less evident.

The characteristics of a fish are the way it has lived its life.

In other words, it is the back that shows how the tuna has lived.

The smell of the sea, where the tuna lives.

The scent of the food that the tuna eats.

The distance the tuna has swam, the tightness of its muscles.

All of these things can be seen in the parts with less fat.

The less fat there is, the more sensitive we are to it.

You have to use every senses in your body to taste it “

Tanaka san has deep love and tremendous passions for this noble creature.
He pays respects and is thanking the fish everyday.

I thank Endo san and Tanaka san for having shown me one of the most precious and beautiful things of this earth can give.

*** PLEASE VISIT MY INSTAGRAM TO SEE MORE VIDEO OF ENDO AT THE ROTUNDA ***

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Hajime Tanaka

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  • Extra photos of Tuna/Maguro: Even farmed tuna from Spain become superb Nigiri by chef Endo-san’s spreme Edomae skills.

新たなる ENDO を読み解く

Endo at the Rotunda

LONDON

Sushi Chef・KAZUTOSHI ENDO | 鮨職人・遠藤和年さん

序章】

2020年12月

イギリスに新たな厳しいロックダウン規制が導入された後も、まだ、真っ新な、新年への希望は、決して消えてはいない。

年が明け、新しい Endoを訪れることにができるようになった時、ぜひ、知っておいていただきたいことがいくつかある。
知っていただければ、Endoでのかけがえのない食事の時間が、より深い意味を持ち、大切な思い出となるだろうと、信じているから。

9ヶ月間、店を離れている間、遠藤さんは多くの困難を乗り越えてこられた。
最も厳しいものだったこの時、「コロナとの戦いと挑戦と」は、別のページ にも書かせていただいたので、もし、時間のある方は、ぜひ、こちらも読んでいただけると嬉しい。

この戦いの末に、そして、その記事を書いた直後にも、遠藤さんには窮地に立たされる危機が訪れており、先週の、ソフトオープニングの日というのは、まさに、瀕死の状態からの復活なのだった。

「心が折れる、と言いますが、私はこの時、本当に、折れてしまっていました。折れた枝が、薄皮、繊維一枚だけで、つながっているような感覚でした。もう、日本へ帰ろうと、本気で考えていたのです」

ソフトオープンの夜に、こうして、心の内を話してくださった時、遠藤さんの目尻にはうっすらと、涙が滲んでいた。

この頃の遠藤さんのお気持ちや、葛藤は、また、別の形できちんと残したいと思っている。

この記事では、それを超えた後の、今。
新しい章が始まったEndoで、どんな寿司が、料理が楽しめるかを、ぜひ、書かせていただきたい。

***

【 第1章  舎利 】

遠藤さんの挨拶と同じく、私も、あえて、この記事では詳細は書かないでおこうと思うが、9ヶ月間の閉店の最中「完全に自分はあの時、折れていた」と吐露された。

その後の新たな門出にあたって、遠藤さんが、一番、大きな物語として掲げているのが、シャリだ。

そもそも、このシャリから、新しい店への活力が生まれ、困難を乗り越えた後の再開へと結びつき、今日の日のような、不死鳥のような羽ばたきをみせたのだと思う。

何が違うのか。

なぜ、シャリなのか。

それは、引越しの際に、偶然、見つけた一つの箱だったと言う。
その箱の存在すら忘れていたそうだ。
開けてみると、中から、亡くなられた父上が所持していた書籍が出てきた。

初版は明治とある、古い江戸前鮨の書物。
遠藤さんの祖父と同時期の古い寿司について、細かく書かれたものだ。
お父様の書き込みが多く記されていた。
すぐさま、母親へ電話をし、話を聞いた。

何かの思し召しではないかと感じずにはいられなかった。
江戸時代の寿司シャリ。
その、レシピを見て、驚いた。
米の炊き方から、酢に至るまで、あらゆる事が違っている。
しかし、そこには科学的な根拠と合理性が備わっていた。

遠藤さんの祖父が、この時代のシャリを使って、鮨を握っていたことも、母親から聞いた。

“ これを、今のロンドンで出してみたい。
大切なお客さんを、江戸時代の日本へとお連れしたい。
過去、現在、未来。
点と点を、線でつなぎたい “

コロナ下での辛い気持ちが、走馬燈のように流れた。

今年一年を過ごして、
私たちの誰もが、
人間はどこから来て、どこへ行くのか、
そんなことを考えずにはいられなかったと思う。

新しいシャリは、砂糖を全く使用していない。
酢は、2ヶ月間熟成の酒粕酢を日本から取り寄せて使っている。
だからだろうか、砂糖がなくとも、全く角がなく、米が生み出す甘味だけで充分な塩梅となっている。

シャリ櫃を見て、少し驚いた。
初めて見る、小ぶりサイズのもの。
400gの米を、3回に分けて炊くという。
そして、その都度、それぞれの、使用する米の配合も変えている。

シャリだけを見せていただいた。
「以前より、もっと赤いでしょ」と、遠藤さんは微笑む。

遠藤さんのシャリは、ネタによって、全て温度が変えられていて、時に、非常に温かい。
例えば、この日のエビは人肌36度、シャリは30度程度、だそうだ。

そして、新しいコースでは、以前よりも、さらに、
手のひらで握りを受けとる数が増えている。

このシャリを、手のひらでいただく時、私たちは、どのような気持ちになるだろうか。

温かい鮨飯の温度が、直に伝わってくる感覚。
指でつまむよりも、さらに、繊細に握られた鮨。

20品以上のコースを全て終えた後に、シャリの記憶が、驚くほど淡いことに気づく。
つまり、シャリの主張や押しつけなどが、まったく記憶として残っていない。
まさに、鮨シャリとしての、真骨頂なのではないだろうか。

「今のロンドンの気温って、江戸時代の日本の気温と、非常に近いんですよ」

思いがけない偶然を、心から喜ぶ遠藤さんの、
内側で暖かく発光するような小さな灯りが、実際に見えた気がした。

この、江戸時代のシャリで握る、彼の一刀入魂の握りを、次の章でご紹介したい。

***

 【 第2章  握り 】

「シャリが変わったので、ネタの仕込みも、すべて変えました。以前と全く違います」

店のスタッフは、最初にこれを告げられた時、「そこまでやるのですか?!」と、あまりの変化にかなり戸惑ったと言う。

ロックダウン中の夏頃、遠藤さんはすでに

「次に店を再開する時は、今まで同じようには開けないつもりです」

と話していた。

その頃は、普通に店を開けて、通常営業に戻ることだけでも、大変で精一杯だった時期だ。
今まで以上を目指すなど、考える気力すらないのが、誰にとっても当たり前だったと思う。
ただ、遠藤さんの中には、そういう考えは毛頭なかった。
待っていてくださり、食べに戻ってきてくれるお客さまに、なにか心に響くものを与えたい。自らがロックダウンで感じた、人と人とのつながりの意味を、より深く、密にしたい。
それもあって、これまで10席だった店は、8席に減らすことにした。一人一人と、しっかり向き合いたい、という思いからだ。
店に行かれたことのある方、あるいは、写真で店内を見たことのある方は分かってもらえると思うが、ロンドンであのような広さ、細部にまで拘ったしつらい、一流のスタッフの数、の店としては、あり得ない席数だ。

「どこかで食べたことがある、というのでは、ダメだと思うんです」

そう遠藤さんが言い、次々と繰り出された鮨、握りは、まさに、有言実行で、一貫一貫に、凄みと猛烈な力、インパクトが漲っていた。

この日、全コース20品のうち、鮨は12貫。
そのうちの、いくつかをご紹介する。



トロ
この日は、スペイン・バレアス海、北大西洋ではなく地中海からのもので、カマの横の部位、大トロと中トロを出された。
熟成は8日間。全ての握りにおいて、しっかりと熟成はかけているものの、ただ、「やり過ぎない」とおっしゃる。熟成もやり過ぎてしまうと、脂がサラダオイルのようになってしまい、香りも損なわれてしまう、からだそうだ。

帆立
私がこの夜、最も衝撃を受けたネタは、帆立だ。遠藤さんは「この魚を買う、ではなく、この人から買う」を信条とする。この帆立を採ってこられるダイバーさんは、他の誰よりも、深く潜って採るのだそうだ。「ホタテがサバイブして(生き延びて)いるんですよ」と遠藤さんは言う。清涼な瑞々しさが炸裂する、あまりにも綺麗な帆立。海の美しい、清い部分だけを濃縮したような、真珠色に輝く帆立。そこに、2年がかりでやっと完成したという、塩分ゼロという昆布締めの英国産キャビアを合わせる。


同じく、サバの味わいの清さ、美しさにも感激した。そして、やはり、同じ海、エリアから獲られるのに、遠藤さんは、この人、という漁師さんから買う。その違いは、食べて、歴然とする。漁師の方の心意気と、ある種の優しさが、舌にビシビシ伝わってくる、この上なく美しい一貫だ。

牡蠣
遠藤さんが出されたこのネタには、江戸前仕事「漬け込み」が存分に施されている。煮蛤と同じ仕事を、牡蠣で仕立てあり、じんわりと、ゆっくりと、ふわりと、内に秘めるなんとも言えない、郷愁的な、一瞬にして自分の懐かしい過去の記憶に引き戻されたかと錯覚するような、そんな味わいが湧き上がってくる風味だ。


圧巻の一貫だ。これ程までに濃厚で力強いスズキをいただいたことは無い。熟成は4日間。旨味が限界に近づいている状態で、三枚付けいただく。ねっとりと口内を埋め尽くす旨みが強烈だ。

この他、山田錦の稲で薫香を付けた人気のサーモン。鰻は、今回は備長炭での炭火焼となっている。シグニチャーのトロのビジネスカードも健在だ。この他、コーンウォール産の昆布締めの烏賊、熟成キャビアを合わせたスコットランドのラングスティーン….、いずれもが特筆に値する。

今回、遠藤さんがフィロソフィーに掲げているのは、「一期一会」ではなく、「一座建立」だと話されていたが、この日、この瞬間限りの、出会いと味わいは、儚くも口からは消えるが、脳裏の記憶には鋭く、深く刻まれている。

***

【 第3 章  御料理  】

新しいEndoで、進化したのは、鮨だけではない。
もしかすると、その底上げが顕著だったのは、この御料理の品々だったのかもしれない。

日本料理の核である、出汁は、目の前で鰹節を削り、お椀が出るタイミングに合わせて引かれる。
温かい、引き立ての一番出汁の、立ち昇る香りと滋味を味わうと、穏やかな気持ちになる。

「最初に、心と身体を清めるような気持ちで、お出ししています」

この日の椀の具は季節もたけなわの蟹真薯であった。

さらに、変化に気づかずにはいられないのが、天ぷらの数々だ。
日本から届いた松茸。英国南部デボン産ロブスター。アンコウにはべっ甲あんが敷かれ、各々は、別々のタイミングで、天ぷらに仕立てられて登場する。
以前よりも軽い衣ゆえか、中の素材が大いに風味を発揮できる環境に整ってある。それぞれに合わせられる”ソース”にも遠藤さんの細部へのこだわりが感じられる。

印象に強く残ったのは、ブリのしゃぶしゃぶだ。吉野葛を絡めてから湯に潜らせることで、もっちりとした食感となり、旨味が密に閉じ込められている。
火を入れるには忍びないほどの、最上級のブリの濃厚さに負けない、しっかりとしたつゆも、丁寧な仕事を感じさせる。

焼き物は、鶉のくわ焼き。そして、トロの握りを何貫かいただいた後の、大トロの”炙り”と名付けられた、ステーキに匹敵するかの如く力強い焼き物。さらには、宮崎和牛肉を軽く火入れした一品。この和牛は、あまりにさりげなくコースの終盤に出されるが、この皿だけで、一つの投稿が書けるほどで、どこまでも、決して、力を抜かない遠藤さんのエネルギーが、この料理で炸裂するかのようだ。そして、これに、添えられるのが、塩釜で調理された、なまやさいさんが育てる、英国産の聖護院カブラとビーツ。わざわざ、これを調理するためだけに、釜を特注したという。

これらの料理は、料理はそれぞれ、握りの合間合間に挟み込まれて登場する。
鍛え抜かれた剛速の直球から、変化球までが、巧みに投げられる。

この一連の流れの中で食事をさせていただくと、明らかに、通常の鮨カウンターとは、全く異なる展開であることを、身体全体で実感する。
そして、これこそが、Endoを、この場所でしか体験し得ない、唯一無二ものとして屹立させているのだ、と気づかされる。
以前より、カウンターに座るお客様は、英国外から訪れている方が半分を占めていた、と言う。


一球闘魂の鮨の迫力に圧倒されて、しばし、放心している間に、このスーパースター級のお料理の数々がめくるめく登場する様を想像してほしい。。。

脳と、舌と、心の格闘技とも思えるかの如く、遠藤さんとの真剣勝負には、覚悟を持って、ぜひ、挑んでいただきたい。

***

【 最終章  結界  】

Endoを堪能するのは、ただ、そこに座って、遠藤さんに身を委ねるだけで、十分だ。

それでもやはり、少しだけでも彼の想いを知っていると、その貴重な時間が濃厚になると思い、この再開後のEndoシリーズを書かせていただいた。

この中で、一番、伝えておきたかったのが、この、結界だ。

(日本の方には馴染みのある言葉だと思うのですが、英語バージョンもあるため、海外の方にも分かりやすいよう、言葉の説明も書きたいと思います)

結界とは、元は仏教用語で、日常の中で、よく耳にするのは茶道の時かもしれない。
結界は、もともと修行僧が、修行に励むために、聖職者のエリアと、その外を分けたことが起源と言われている。
つまり、内と外、聖なる域と俗なる域を分ける境界線のことであるが、お寺や神社でなくとも、日常にも、ある種の結界は見てとれる。
例えば、商店の暖簾や、食事のお箸も、結界の一種だと考える向きもある。

ただ、遠藤さんが、レストランを聖域と考えているのではなく、単に、日常の煩わしさやな悩みなどから、せめて、Endoで食事をするときだけは解き放たれて、しばしの楽しい口福な時間を味わってほしい。そう願う気持ちを込めて、最初のドリンクを「結界」という名で出されている。
「結界」を越えて中に入り、その場に身を委ねると、いい時間に出会える。
遠藤さんは、そのためには、自らは全力を尽くして参ります、という、ある意味、彼にとっての決意表明なのだろうとも思う。

新しいコースは、五つのチャプターに分かれており、最初は「再会」から始まる。

再会に際して、いただくこの飲み物が、ほうじ茶がベースになった、ちょっとした趣向のあるこのドリンク。
口に入れると、なんとも言えない面白い趣向があるが、ネタバレにならないよう、ここでは割愛する。

そして、全てのコースを終えた後に、バーに座って、デザートと共にいただくのが、三種のお茶をブレンドしたものだ。ここでもやはり、同じほうじ茶が一番配合が多くされてあり、始めと終わりが、一巡して、まあるく完結するのを、しみじみ感じ取れる。

新しいEndoで、まだまだ、特筆したいことは多々あるのだが、いくつかに絞って、記させていだく。

*

備長炭
今回から、和歌山から入手する、備長炭を使って調理をしている。日本の料理ジャンルで、”職人技”と呼ばれる、いくつかの技術があるが、この、炭を扱う技術も、確実にその一つである。扱いは非常に難しいが、それを使いこなした時に得られる、未だかつて出会ったことのない素材の真の価値を引き出す、とてつもない威力。この場で、その一片に触れていただきたい。

お酒
菊谷なつきさん (www.museumofsake.co.uk)( www.instagram.com/natsukipim ) がセレクションする日本酒が、さらにパワーアップしてる。日本でもなかなか手に入らないという銘柄を、Endoのために仕入れているそうだ。彼女の日本酒の目利きは一級で、彼女のアドバイスに従順に従えば、洗練された、格別の日本酒に辿り着ける。この日は新政のエクリュをいただいた。エレガントな芳香と舌あたり。華があり、躍動感のある味わい。まさに、Endoの新しい出発を祝うにふさわしいお酒だった。「そのお酒に物語があるかどうか」。なつきさんがお酒を選ぶときの基準となっている事柄だそうだ。 

BAR
海外では特に、日本料理や鮨の店と言えども、バーエリアを求められる。Endoのバーで、今、行われているのが、鮨に合わせたカクテルを出すこと..。これは、私にも、全く未知の世界で、今後、こちらのバーテンダー市川潤さんから、ご教授いただきたいと思っている。この前代未聞の取り組み。非常にワクワクさせられる。

スタッフ
遠藤さんのインパクトが強いEndoではあるが、その実力は、スタッフに大きくある。初めて遠藤さんをイベントでお見かけした時、隣に立つお弟子さんの動きに、私の目が釘付けになった。阿吽の呼吸を逃さない、シンクロした流れ。そのようなスタッフがいらっしゃることが、彼の大きさをあらわしてもいる。

「英国が本格的なロックダウンに突入した時、誰も辞めさせない、と決めました」

技術だけでなく、心のありようも素晴らしいスタッフの皆さん。お店では、ぜひ、このスタッフの皆さんの実力をも味わっていただきたい。

SUMI
すでにご存知で、食事、お弁当をテイクアウトされた方もいらっしゃると思うが、12月に遠藤さんが新しく出店した、カジュアルな店だ。お母様の名前からとった店名。店内の暖かい灯の中に足を踏み入れると、心休まるのは、そんなつながりがあるのかもしれない。鮨ヘッドシェフは、安田明徳さん。料理を担当するヘッドシェフにDavid Buryさん。遠藤さんの精神を大いに受け継がれている。小回りのきく、活気あるこの店が、これから、どんな面白い展開をされるのか、とにかく、目が離せない。

www.sushisumi.com

序章を含め、五つの章に渡って長く書かせていただき、また、ここまで読んでいただきまして、本当にありがとうございます。
唯一無二のEndo at Rotundaの世界。
文章と映像で堪能していただけていれば、とても光栄です。

***

ブログに先立って掲載したインスタグラムの投稿へ、皆様からの様々な感想をいただき、大変励みになっています。
いただいた応援、嬉しいメッセージも、遠藤さんへ、きちんとお伝えしています。
ぜひ、皆さんのコメントを書き込んでくださいませ。

(インスタにはビデオも載せていますので、ぜひ、よろしければご覧ください)

今はただ、一刻も早く、感染が収束し、また、元のようにレストランで食事のできる日が戻ることを祈るばかりです。

そして、生産者の方々、サプライヤーの方々が、新しいブレグジット後の規制の下も、変わりない環境が続き、これまで同様の素晴らしい食材をご提供できる状況であることを、心より願っております。

お世話になった皆さまに心より感謝申し上げます。

ジェフリーズ直子

Naoko Jeffries

Decoding the New Chapter of ENDO at the ROTUNDA

Kazutoshi Endo ’s New Challenge

新たなる ENDO を読み解く [鮨職人・遠藤和年さん]

FOREWORD – 序章 –

I believe that hope for a new year has not disappeared.

When the next year comes and we are able to visit the new Endo at Rotunda, there are a few things I’d suggest you to know.
I believe these knowledge will make your time and dishes have a deeper meaning and make it even more precious memory.

During the nine months away from the restaurant, Endo san has overcome many difficulties.
I have written a piece about his battles during the lockdown “Finding My Taigi”, so if you have time, I would be grateful if you could read it too.


After all these challenges, and just after I wrote the article, he faced another extreme difficulties, and the last week’s soft-opening day was all about coming back from the brink of death.

“They say that the heart is broken, but I was indeed broken at this time. It was like a broken branch with only a thin layer of skin, a single fiber, holding it together. I was thinking of going back to Japan”

When he spoke to me at the end of the soft opening day last week, I saw tears in the corners of his eyes.

I will leave to write about his feelings and struggles at that time for another opportunity.

In coming my posts, I would like to tell you about the present, after he has gone beyond that point, the new chapter that has begun at Endo, and his brand new sushi and food you can enjoy there.

***

Vol.1  SHARI –  sushi rice 舎利

Like Endo san’s greeting at the opening, I, too, dare not go into details in this article, but during the nine months of closure, he confided that “I was completely broken at that time”.

The most important story of the new beginning that Endo san states is Shari – sushi rice.

Shari was the new start of it all.

Shari was the source of the energy that allowed him to reopen the restaurant after the difficulties he had faced, like a phoenix flapping its wings.

So what’s the difference?

And why Shari?

He says it was a box he found by chance when he was moving house.
He had forgotten that the box even existed.
When he opened it, he found a book that belonged to his father who had passed away.

This is an old book on Edomae Sushi, first published in the Meiji period.
It is a detailed description of old sushi from the same period as Endo san’s grandfather.
Many of Endo san’s father’s notes were there too.
He immediately called his mother and asked her about this.

Endo san couldn’t help but feels that this was a sign.
Sushi rice from the Edo period, more than 100 years ago.
He was surprised when he saw the recipe.
Everything was different; the way the rice was cooked, the vinegar they used…
However, there was scientific reasons and rationale behind it.

His mother told him that his grandfather used to make sushi using this Shari.

A passionate feeling welled up inside Endo san.

“I want to serve this sushi in London today.
I would like to take my dear customers to Edo-period Japan.
Past, present and future…..I want to connect the dots”

The painful feeling of being under the pandemic run through him, like a revolving lantern.

Throughout this year, I don’t think any of us have been able to stop thinking about where we come from and where we are going.

The new Shari is completely sugar free.
The vinegar Endo san uses now is made from sake lees, aged for two months and brought from Japan.
This may bring out the sweetness and the roundness of the rice even without sugar, and is creating the perfect “Anbai” balance.

I was a little surprised when I saw the really tiny rice chest.
The shari is cooked in three portions of 400g each.
And each time, Endo san changes the mix of rice used.

Endo san showed me a small portion of the rice.

“Can you see it’s even redder than before?”

he says, smiling.

Endo san’s Shari is used at different temperatures depending on the ingredients, and is sometimes very warm.
For example, on this day, the prawns were 36°C, at the body temperature, while the Shari was about 30°C.

And in the new course, we are receiving even more nigiri in the palm of our hands than before.
How do we feel when we receive this new Shari in the palm of our hand?
You can feel the temperature of the warm sushi rice directly in your hand.
Moreover, the nigiri is made even more delicate than when we pick it up with our fingers.

After finishing all 20 plus courses, you realise that your memory of Shari is remarkably faint.
In other words, there is no sense of the rice’s insistence or imposition.
This is the absolute core essence of sushi rice.



“The temperature in London today is very close to the temperature in Japan in the Edo period,”

said Endo san, delighted at the unexpected coincidence.

I felt I could see the little lights glowing warmly inside him.

***

Vol.2  NIGIRI 握り

“ The Shari has now changed, so the preparation of the Neta has all changed. It’s completely, totally different”

When the staff at the restaurant were first told about the change, they were quite perplexed: “Chef, are we going that far?”

In the summer, during the lockdown, Endo san told me already that “The next time we reopen, I won’t do it normally”

At that time, I think it was June, just to reopen the restaurant and get back to normal business was very difficult. It was normal for anyone to not even have the energy to think about making it better than before. But Endo san had no such thoughts in his mind. He wants to give something reaching to the customers’ heart who are waiting for him and come back to eat. He wants to deepen the meanings of the human connection he felt at the lockdown. So, Endo san decided to reduce the number of seats from 10 to 8. This is because he wants to be able to face each person more individually. If you’ve ever been to the restaurant or seen a picture of it, you’ll know that the number of seats is completely unthinkable in a place like London, with that space, that décor and that first class staff.

“I don’t think it’s enough to serve sushi that you would say you’ve eaten somewhere before”

The sushi and nigiri he served were exactly what he promised.
Each piece was strewn with intensity, emotional power and powerful impressions.
They were utterly magnificent. 

On this day, out of the 20 dishes in the course, there were 12 pieces of sushi and nigiri.

For the new course for this time of the reopening, Endo san states his philosophy is not common “Ichigo Ichie” – to treat every meeting is like once in a lifetime, but “Ichiza Konryu” – to stand as one unit.

On that night, at that moment, it was still my Ichigo Ichie, and the encounter and the taste were ephemerally disappeared in my mouth, but they are keenly and deeply etched in the memory of my mind.

TORO
On this day, we were served the Otoro and Chutoro, the part next to Kama, from the Spanish Balearic Sea, not the North Atlantic but the Mediterranean.
(In the video, he says that tomorrow it will be lockdown again, so only the best of the best parts will be served)
The fish is aged for 8 days. This Neta was carefully aged to bring out its deep flavour and umami, but “not too much”, he says. He doesn’t overdo it, because if he does, the fat becomes like vegetable oil and the flavour is lost.

SCALLOPS
The most sensational nigiri of the night for me was the scallops. Endo san’s philosophy is “Not buy this fish, but buy from this person”. The diver who brought us this scallops dives deeper than anyone else. “They are alive” says Endo san. The scallops tasted like a beauty out-of-this world. Ultimately pure, bursting with rare elements of the deep water. It was like a pearl that they seem to concentrate only the beautiful, purity of the sea. Unbelievable flavour. And the actual scallops magically disapper from your mouth in a moment. I was left with the feeling of a pounding heart…… There, on top, is the British caviar of Kobujime and containing no salt, which Endo san took two years to create.

MACKEREL
I was also impressed by the cleanness and delicate aroma of the mackerel. Endo san buys his mackerel from a fisherman he put his trusts in full. Even though the fish come from the same sea and area, the difference is obvious when you eat it. It is the beautiful sushi, with the spirit of the fishermen and a certain tenderness that is palpable on the tongue.

OYSTER
This oyster are made with the same technique as Nihama, the Edomae work called “Tsukekomi” that is also often used for Hamaguri clams. Very traditional method, cooked in soy, sake and other ingredients, but Endo san’s one is extremely softly done. In your mouth, this nigiri, slowly and roundly, delivers an indescribable nostalgic flavour that brings you back to the memories of your past in an instant.

SEA BASS
This is the superb sea bass sushi. Never come crossed before such a rich and powerful sea bass. Four days ageing, a piece of three slices. The umami created by the ageing is remarkably intense that fills the mouth with a lingering pleasure.

OTHERS
In addition to the above, the popular salmon is fragrant with Yamadanishiki smoked rice straw.. The eel is this time charcoal grilled with Binchotan. The signature “business card” is still in place. Other highlights include Kobujime squid from Cornwall and Scottish langoustines with aged caviar …. All of these are excellent and moving.

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Vol.3  ORYORI  dishes お料理

Sushi is not the only thing that has evolved at the new Endo.
Perhaps it is the Oryori – dishes that have clearly improved the most.

The Dashi, the core of Japanese cuisine, was made in front of us, from shaving dried bonito flakes, just in time for the Wan dish to be served.
The aroma and flavour was rising up and the warm, freshly prepared prime Dashi sooth my body and calm my mind.

“At the beginning of the meal, I serve Dashi dish as if to purify the body and soul”

This day’s Wan was with crab Shinjo, which is the delight of the season.

What’s more, you can’t help but notice the changes: the Tempura.
Fragrant Matsutake mushrooms from Japan. Lobster from Brigham, Devon. The monkfish is covered in Bekko an sauce made with dark soy and thicken with Kuzu. And these tempura are served at different times, interspersed between the courses.
The batter is lighter than before, allowing the flavours of the ingredients to shine through. Endo’s attention to detail is also evident in the different sauces that accompany each dish.

Each of these dishes appears interspersed between the nigiri, and they are as like from the well-honed fast, straight ball to the screwball, Endo throws them with skill.
It’s a completely different experience from the usual sushi counter.
This is what makes restaurant Endo a unique experience, it stands out as the only one of its kind.

Imagine being so overwhelmed by the power of sushi, which Endo san put his soul in every “throw”, that you let your mind wander for a moment, while a dazzling array of superstar dishes makes its appearance.

Be prepared for a serious match with Endo san , the one to stimulate the brain, delight the tongue and shake the heart.

The most memorable Oryori for me was the yellow tail Shabu-Shabu. The yellow tail is lightly glazed with Yoshino kuzu before being parboiled for a second, giving it a plump texture and sealing in the flavours.
The dipping Tsuyu sauce is as rich as the supreme quality yellow tail which almost too good to cook. You will see Endo san’s meticulous work in it.

For the Yakimono grill dish, we first had Kuwa-Yaki quail. After a couple of pieces of toro nigiri, we had a powerful dish called “seared” Otoro, which was almost as like steak. And then there is the Miyazaki Wagyu beef, very delicately cooked. This beef was served so unobtrusively at the end of the course, but I could write a whole post on this dish alone. It was a real burst of energy from Endo san, with no corners cut. The dish was accompanied by British Shogoin turnip and beetroot, cooked in a Shio Gama. The vegetables are covered all over with salt, placed in a ceramic container and cooked slowly in the oven. The pots were specially ordered just for this dish.

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Vol. 4 KEKKAI  結界

To enjoy restaurant Endo, it is enough to just sit there and leave yourself in the hands of Endo san.

Still, knowing a little bit about the chef’s thoughts would make your precious time at this place even richer, so I decided to write this series after the reopening.

What I wanted to tell you the most in this series is KEKKAI – the boundary.

This word, which is difficult to understand immediately on hearing, appears at the beginning of Endo’s dinner. This is why I felt compelled to tell you and write this article.

KEKKAI is originally a Buddhist term, which is often heard perhaps during a tea ceremony.
It is said to have originated when monks separated the sacred area from the secular area in order to practice asceticism.
In other words, it is a boundary line that separates the inside from the outside, the sacred from the profane, but we can also see certain kinds of wards in our daily lives, not only in temples and shrines.
For example, Noren- the curtain of a shop, or placing the chopsticks in a line for a meal are also considered to be a kind of boundary.

However, it’s not that Endo san considers his restaurant a sanctuary. It’s just that he wants us to be free from the troubles and worries of everyday life, at least when we dine at Endo, and to enjoy a moment of pleasure. That’s why the first drink is called “KEKKAI”. After this drink, you will feel calm and happy.
In other words, I think, Endo is expressing his determination to do his utmost to make this happen.

The new course is divided into five chapters, the first of which is “Reunion” , where you will be served Kekkai drink based on Hojicha tea, with a slight twist.
I won’t go in details not to spoil it for you.

When the course is over, we sit at the bar and are served a blend of three different teas. Again, the same Houjicha is used in the greatest proportions. I felt the beginning and the end coming full circle.

BINCHOTAN
Now, Endo san is cooking with Binchotan charcoal from Wakayama. There are a number of techniques in Japanese cuisine that are known as ” Shokunin Waza – artisanal”, and this technique of using Bonchotan is certainly one of them. It is very difficult to handle, but when it is mastered, it has a tremendous power to bring out the true value of ingredients that you may have never been encountered before. You can get a taste of it at Endo.

SAKE
Natsuki Kikutani who is in charge with Sake and Wine menu at Endo has uppedated her selection of Sake. She sources some of the hardest to find brands in Japan for the restaurant. Her sake connoisseurship is first class, and if you follow her advice, you’ll meet a refined and exceptional Sake. On this night, I had ARAMASA Ecru. Elegant in aroma and texture, the taste is floral and dynamic. It was the perfect Sake to celebrate Endo’s new start. Natsuki san’s philosophy is “whether the sake tells a story”.

BAR
At the Endo bar, they are now serving cocktails to go with the sushi…. This is a completely new world for me and I hope to learn more from the bartender, Jun Ichikawa. This is an unprecedented initiative. It’s very exciting.

THE STAFF
Although Endo san has a strong impact, it is the staff that make the difference. The first time I saw Endo san at an event, my eyes were glued to the movements of the apprentice standing next to him. The synchronised flow of his movements, the way he never misses a breath. The fact that he has such a staff shows how excellent he is.

“ When Britain went into full lockdown, I decided that I would not let anyone go “
Endo san told me.

The staff are wonderful, not only in their skills but also in their hearts. At the restaurant, I hope you will also relish the competence of all these staff members.

SUMI
SUMI is a new casual restaurant opened by Endo san in December. It’s named after his mother. Perhaps it is this connection that you feel like a warm welcome when you step into the calm light of the restaurant. The head Sushi chef is Akinori Yasuda san and the head cuisine chef is David Bury, who both have inherited much of Endo san’s spirit. It will be interesting to see what the future holds for this lively restaurant. www.sushisumi.com

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I have written about new Endo at Rotunda in five chapters including the foreword.
I’d like to thank you all for letting me write this long texts, and for reading this far.
The world of Endo at Rotunda is One and Only…
I hope that you have enjoyed the stories, the picture and the film images.


Please do check lively actions with some films that are up on my Instagram.

www.instagram.com/the.japan.set_naoko/




I can only hope that we can return to eating in restaurants soon.
I am also wishing all the producers and suppliers the best of luck in continuing to provide the same excellent food under the new post-Brexit regulations.

Thank you from the bottom of my hearts to everyone who gave me the wonderful opportunity and the kind support for me.


December 2020
Naoko




Prestigious A5 Wagyu Sando by Chef Taiji Maruyama, TAKA Marylebone

KAGOSHIMA A5 WAGYU STEAK SANDO

There is a Sando (Sandwiches for Japanese) that is currently much talked about and simply the best in London. It’s WAGYU STEAK SANDO created by a team of exciting modern Japanese restaurant TAKA Marylebone London, lead by the executive chef TAIJI MARUYAMA.

No one argue that A5 (the highest grade) is the most sought after Japanese Wagyu beef, and at TAKA, they use only this top player.

Chef MARUYAMA san has a long experience at Nobu Restaurant and Mr Nobu Matsuhisa himself cared for and looked after the chef, and he also has worked at the famous Japanese restaurant in UK, Beaverbrook Hotel.
Over a long period of time, Maruyama san has built up a strong relationship of trust and great passion with a meat wholesaler who specialises in only the finest authentic Japanese Wagyu beef.

Executive chef TAIJI MARUYAMA

“We use A5 grade, which our customers love and today’s Wagyu is from Kagoshima in Kyushu; A5 is so precious that I don’t want anything to go to waste at all, including the fat “

says the chef.

To create Wagyu sando, the chef chose to use Japanese loaf bread Shokupan from Happy Sky Bakery which has soft and bouncy texture with a subtle sweetness as like the one in Japan.

The sirloin steak 80g is cooked heavenly perfect to medium rare, the heat gently gone through, with no rare part or no tough part, a refine finish.
The Wagyu is first Sous Vide at 55°C for 15 minutes and then cooked in a veg oil bath for only 30 seconds, in a piping hot pan.

The sauce is the chef’s version of “Worcestershire sauce” made from Haccho miso.
It has a taste reminiscent of Katsu sauce and makes the beef feel like it. Very clever.

Other ingredients include English mustard and butter. Chef Maruyama wanted to create a dish that blended Japan and England together.

Have a look the cooking process on my Insta Reels Posting

THE TASTE ….


Despite the image of its big meaty alpha appearance, the actual taste is really light.
The fat of the finest Wagyu melts at a low temperature, making it light on the tongue and not rich or heavy when tasted.
Only the gorgeous sweetness of the beautiful Wagyu fat remains, lingering on the palate.
The flavour also merges with the Shokupan’s sweetness along side with the mustard and the spicy sauce which giving a good kick.
It’s just a delight sando that will fulfil your body and mind

Chef TAIJI MARUYAMA’s great creativity and philosophy go beyond the super popular sando.





When I met the chef, the first word Maruyama san told me was,

“I don’t want to waste any tiny parts of the Wagyu. Use up every part of the beef, even the fat and drippings”

The chef’s “Head to Tail Eating” philosophy is reflected in every dish on the menu here.


KAGOSHIMA WAGYU STEAK HACHE is another highly recommended dish, which is actually a not mince pate, but SIRLOIN steak strips formed into a hache. This allows the flavour and good biting texture of Wagyu greatly alive… Really really juicy with excellent meat flavours, so satisfying at ever bite. Absolutely gem dish 🚀 A good competitor to the Wagyu Sando 💪🏻

WAGYU DRIPPING RICE BOWL is the one where you find the chef’s thought from… as he wanted to use up even all the drippings. So he created fantastic Sukiyaki flavour bowl of rice, which you eat with Nori seaweed. This is another amazing dish ⭐️ made by a brilliant talent.

Chef’s love for the ingredients goes deep in vegetables, distinguished with @namayasai farm in Sussex.

TSUKEMONO (pickled vegetables) SALAD or SUSSEX PUMPKIN WITH TRUFFLE MISO showing how much vegetables can express…

MOCHI FLATBREAD really surprised me, with its real Mochi-like texture, nice plump and the wonderful “chewinesss”.




TAKA Marylebone

www.takalondon.com

ROKETSU  Gozen Bento by Daisuke Hayashi     「露結」by  林大介 “京懐石の息吹”

【LATEST NEWS】 ROKETSU GOZEN BENTO by Chef Daisuke Hayashi.

京料理界を代表する、林大介シェフの新たなる懐石料理店「露結」の 御膳弁当。

(日本語記事は、英語版の後にあります)

“Absolutely Phenomenal ” is my heartfelt voice.

I clearly, confidently would like to say that the opening of Chef Daisuke Hayashi’s new restaurant ROKETSU (scheduled in Spring 2021) will be one of the most important and exciting events in Japanese cuisine for the coming year.

And this gorgeous Bento Box, limited numbers only each week, is a sneak peek of what it will be like.

Each “dish” of this Bento is absolutely phenomenal.

Chef Hayashi san is a genuine master of Kyoto cuisine, trained under Yoshihiro Murata of Kyoto Kikunoi, who holds seven Michelin stars and “The Don” of Kyoto Cuisine, for more than 10 years before moved to London in 2009.

There are not many chefs even in Japan, who are steeped in deep traditions, trained in the highest prestige and have mastered the art of cooking, Kyo Kaiseki.
Chef Hayashi’s classic Kaiseki technique is unparalleled, and the knowledge on Japan’s traditions and the cuisine is vast.

After Hayashi san moved to London, with his mentor Mr. Murata san’s strong desire to bring authentic Japanese cuisine to the world, he helped and worked for several new openings as the executive chef including Tokimeite in Mayfair.
At there, he and Murata san have explored Japanese dishes which would suit Western palates, but for this time, after waited for more than a decade, Hayashi san decided to open his own restaurant and he is determined to create authentic Kaiseki, just like the one served in Japan.

“ In making this Bento, I have simply followed the tradition and cooked it the way it was meant to be cooked.“

The chef says modestly that he just did normal thing, but as we all know, doing “normal” is the difficult thing.
And for me, someone who is living outside Japan and at least know the differences of the water hardness and the ingredients for example, to cook like in Japan seemed an impossible task…

This Gozen Bento took me straight to Kyoto.

It was surprising and inspiring.
Never before have I had such authentic and totally consistent Japanese food abroad.

Since I first arrived at London 1995, I have seen brutal reality of that it is extremely difficult to recreate real Japanese food outside Japan.
It is because, Japanese cuisine is hugely rely on its unique nature, so the further away you go from it, the more severe the condition becomes.

Master Murata told me that nearly 40 years ago, when he went to France to cook a Kaiseki dinner with other top Kaiseki chefs, he took all the water and ingredients with him from Japan.
He was devastated by the reality that he could not cook Japanese without bringing all of that.
Since then he has worked to make Japanese food using local ingredients, but I have been seeing that it is extremely challenging.

So, having this Bento in front of me, the taste of Japan, the taste of Kyoto, spread out in front of me and came back to life, and I wondered how it was possible to make such food.

It’s a Bento that seems to have magically appeared from somewhere else.

🍱 TO ORDER :

www.jgourmet.co.uk/exclusive

露結 by 林大介 シェフ

来春に開店が予定されている「露結」。

海外における日本料理界、来る021年の、日本料理の一つの大きな転換点、となるであろう、

非常に重要な意味を持つ、新たなお店。


記事巻頭の写真は、こちらの御膳弁当です。

この度、「露結」を立ち上げ、牽引されるのは、林大介オーナー料理長。


京都・菊乃井本店の村田吉弘氏の元で、10年以上に渡り、確かな技術と伝統を身につけられ、2008年の北海道でのG8サミットの際には、この国際会議の料理を全て総指揮されました。

その後、2009年に渡英され、長きに渡り、ロンドン、欧州にて、日本食レストランの立ち上げ、料理長を務める傍ら、海外における日本料理の普及と啓蒙に尽力を尽くされてきました。

日本料理の伝統技術と深い知識、何よりも、日本料理の心を有する、数少ない、料理人さんです。

その林シェフが、満を辞して、ご自身のお店、ロンドンでは初のカウンター懐石料理店となる「露結」を、来年春ごろ、立ち上げられます。

この、御膳弁当は、その一端を、まさに垣間見れ、体験できる、貴重なお弁当と言えます。

長く、海外に住んでいらっしゃる方、海外でイベントをされたり、今、こちらで包丁を握っておられる料理人の方々は、きっと、深く頷いていただけると思うのですが、いかに、海外で日本料理を作ることが難しいか。。。

日本料理が、日本の自然と非常に親密に寄り添っているため、そこから遠ざかれば遠ざかるほどに、その、厳しさは増していきます。

私自身、1995年の初渡英より、これまでも、多少なりの現状を見てきましたが、心痛く思う現実に、何度も、打ちのめされることがありました。

それが、このお弁当を手にとり、今、驚きと、感動と、喜びに包まれています。

林さんは

「当たり前のことを、当たり前にやっただけ」

とおっしゃいますが、その、当たり前を遂行することが、どれほど難しいか。。。

こちらをいただいて、目の前に、口の中に、あの、日本の、京都の味わいが広がり、蘇り、全くもって、どうして、このような御弁当ができるのか、まるで魔法のような、別の世界からふと現れたような、奇跡、とでも呼びたい御弁当なのです。

この、普通でない2020年、最後の月に、突如、舞い降りた、希望とでも呼びたいような、一つのお箱。

この後、いくつかの投稿で、こちらのお料理の内容を書かせていただきたいと思っております。

🍱 この御膳のご注文はこちらより。

www.jgourmet.co.uk/exclusive



The Cookbook for all FoodLovers

THE WHOLE FISH COOKBOOK

– New ways to cook, eat and think – by Josh Niland

This is the cook book that opens up new era for all foodlovers,
whether who loves fish or not.

The author and the chef Josh Niland of Saint Peter guides us to a new field of fish cooking
with his brilliant approaches, which includes dry-ageing, eating offals, bones and its scales…
These weren’t much talked about before in the most of the countries.

I discovered many different dimensions of looking at fish from this book,
and I am fascinated to see traditional Western meat cooking methods applied to fish cooking.

I strongly believe that the techniques which were developed by locals for over hundreds or even thousands years under the local climate, with local ingredients and paired with local wine is the best way to create the dish, and they taste the best without a doubt.
So in that theory, this is a new way to cook fish but it’s also supported by the traditional wisdoms…

Very informative and simply an amazing cookbook!

(This is the winner of Book of the Year of 2020 #JamesBeardFoundationBookAwards)

Another book I’ve recently bought which also won James Beard book award;
Eat Like a Fish: My Adventures as a Fisherman Turned Restorative Ocean Farmer
by Bren Smith

シドニーで魚レストラン「Saint Peter」のシェフ、
ジョッシュ・二ランド氏による、
魚の料理本。

昨年の9月に刊行され、 
先日発表された、
アメリカの食業界で権威ある、James Beard Foundationの、
多岐にわたる、数々の料理本のジャンルの中での、最高賞を受賞しました。

海外における魚へのアプローチを、一気に塗り替える一冊です!

これまで、西洋ではあまり語られてこなかったトピック、
魚の熟成、内臓や皮、骨の食べ方についても触れられ、
魚を、肉のように捉えて、アプローチしているところが、
非常に新しく、
かつ、広く、受け入れられている一因だと思います。

もちろん、モダンで、今的な空気感が溢れることは..言わずもがな。。

世界で、今、大きなうねりとなっている動き。
肉食を控えること
菜食主義
魚をもっと食べようというアクション
そして、漁業に関する環境への配慮。 
この本は、このあたりも、しっかり見逃してはいないです。

(そもそも、今の世界の料理界の流れでは、環境を無視して、トップシェフと名を馳せることは、あり得ないので。。) 

もう一冊。

こちらは、届いたばかりでまだ全部は読み切っていないですが、
漁師から、海藻を栽培する”ファーマー” になったブレン・スミス氏の自伝的なお話。
こちらも、ジェームスベアードのWritingカテゴリーを受賞。
とても、面白そうです。